ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか？

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先日、家でテレビを付けていたら、東大童貞男とAV女優が一日限定でルームシェアをするという番組がOAされており、思わず見入ってしまった。偏差値の世界では天下無敵の東大生が、AV女優に手玉に取られていくプロセスは、なかなか見応えがあり、放送後もずいぶんと話題になっていた。

番組名が「ミズトアブラハイム」という名前であることを後から知ったのだが、水と油のように対極な二つが組み合わさると、情報が拡散されるという好例なのだと思う。

そういった意味で、本書はタイトルからして秀逸だ。ローマ法王と米。この縁もゆかりもなさそうな、両者をタイトルに入れることができた時点で、PRの仕事の大部分が完了しているとも言える。はたしてこの両者が、どのように結びついていくのだろうか？

舞台は石川県羽咋（はくい）市という、地方にある小さな市。主役は、市役所で働く一人の公務員だ。突然、上司から言われた「おまえみたいなヤツは、農林課に飛ばしてやる！」という台詞。まるでドラマのワンシーンのようなシチュエーションから本書は始まる。

羽咋市の中にある神子原（みこはら）地区は、神子原、千石、菅池の3集落からなる農村集落だ。住民の多くが農家というこの地区の最大の課題は、高齢化率が高く、離村率も激しいということ。とくに菅池は高齢化率が57%にも達し、住民の平均年間所得は87万円。いわゆる”限界集落”と呼ばれるにふさわしい状況であったのだ。

そんな限界集落を立て直すための特命を下されたのが、本書の著者でもある高野 誠鮮さん。本書は、後にスーパー公務員とも呼ばれることになる高野氏の奮戦記だ。

著者は、神子原地区をにぎやかな過疎集落にするために、「山彦計画」と名付けたプランを立ち上げる。そしてそれを実現するための手法は、会議はやらない、企画書もつくらない、上司には全て事後報告でスピード化、予算は60万円というもの。全てが型破りのやり方であった。

矢継ぎ早に繰り出したプロジェクトは「空き農地・空き農家情報バンク制度」「棚田オーナー制度」「烏帽子（よぼし)親農家制度」というものである。これらはいずれも、神子原地区に若者を多く集め、あるいは移住させることで、集落の人たちとの交流を図るという、過疎集落の活性化を目的とした施策であった。

例えば、烏帽子親農家制度とは、主に学生などの若い人に農家に2週間泊まってもらって農業体験をしてもらうという制度だ。しかし、この制度には、旅館業法や食品衛生法にひっかかるのではないかというクレームがついてしまう。そこで「あくまでも仮の親子関係である」という事実を強調して切り抜けるために、平安〜室町時代から伝わる伝統文化「烏帽子親制度」になぞらえたのだ。

この時に、特に著者が話題作りとして熱望したのが「酒が飲める女子大生」の受け入れである。このやり方など、いかにもTV的な手法なのだが、それもそのはず。著者は、大学在学時に雑誌のライターやテレビの構成作家の仕事をしており、テレビでは「11PM」や「プレステージ」なども手がけていた経歴の持ち主なのである。

そ���て、その極めつけが、本書の標題ともなっているローマ法王を活用したブランド化戦略だ。大前提にあったのは、そもそも神子原地区のコシヒカリが非常に美味しいものであったということである。碁石ヶ峰の標高150mから400mの急峻な傾斜地にあるので、山間地特有の昼夜の寒暖差が激しいことから稲が鍛えられているのだ。

しかし神子原米そのものが認知されておらず、なかなか売上に結び付かない。そのために話題作りが必要であったのだ。

神子原を英語に訳すと、「the highlands where the son of God dwells」になる。「サン・オブ・ゴッド」は「神の子」、神の子といえば有名なのはイエス・キリストではないか。すると神子原は、キリストが住まう高原としか翻訳できないんです！
ならば、キリスト教で最大の影響力がある人は誰か？全世界で11億人を超える信者数がいるカトリックの最高指導者であるローマ法王しかいない。
そんな半ば強引ともいえる拡大解釈を経て、著者は本当にローマ法王へのアタックを開始する。そして、バチカン大使からの回答は、以下のような粋なものであったのだ。

あなたがたの神子原は500人の小さな集落ですよね。私たちバチカンは800人足らずの世界一小さな国なんです。小さな村から小さな国への架け橋を私たちがさせていただきます。
かくして、神子原米はローマ法王への献上が認められたのである。

これには、さらに裏話がある。著者は最初からローマ法王を狙っていたわけではなく、そもそもは天皇陛下への献米を目論んでいたのだ。そして同時に、アメリカを米国と書くことから、アメリカ大統領へもアプローチをかけていたのだという。TV的にアイディアを考えて、Web的にトライ＆エラーを繰り返す。ここら辺が成功の要というところだろうか。

この他にも、米の袋にある「能登　神子原米」の文字をエルメスのスカーフをデザインした書道家の先生にお願いしたり、アラン・デュカスとのコラボレーションを行い、外国人記者クラブで記者会見を行ったりと、情報の組み合わせやベクトルにさまざまな創意工夫をこらし、確実に売り上げへと結びつけていく。

世の中を動かすための「人」「モノ」「金」「情報」。多くの場合、モノを変えるということは簡単には出来ないだろう。そこで、人と情報を動すことからスタートし、最終的に金を動かすに至ったということなのだ。

さらに僕が感心するのは、これらのPRの効果が一過性のものに過ぎないということを著者がよく理解しているということだ。著者自身、対症療法と根本治療という言い方をしているのだが、これらをあくまでも対症療法として行い、根本治療のための施策は別に打っていたのだ。

その一つが、神子原米の品質維持のために行っている、人工衛星による食味測定だ。これは高度450kmの上空から、人間の目には見えない近赤外線を当てて、水田内の稲の反射率と吸収率を測定し、タンパク質含有率を計算で割り出す仕組みである。

一般的に、タンパク質の含有率が6%以下だと食味が良いとされている。水田区画のどの部分が6%未満に相当するのか、パソコン画面に色分けで表示されることにより一目で把握することができるのだという。

もう一つは、農家経営の直���所「神子の里」を開店したということだ。農林漁業の一次産業の最大の欠点は何かというと、自分で作ったものに自分で値段をつけられないことにあるそうだ。そこで、生産者自身が株主となって農業法人を作り、生産・管理・流通のシステムを作るという、まさに根本治療となる手立てを打ったのだ。

普段、僕が仕事をしている中でも、本書の著者のように対症療法と根本治療の双方へきちんと目配りできる人というのは、なかなかお目にかかることが出来ない。目的意識がはっきりしていて、物事の本質をきちんと分かっている人なんだろうなと感じる。

そんな著者が現在行っているのが、『奇跡のリンゴ』でおなじみ、リンゴ農家・木村秋則さんとの自然栽培に関するプロジェクトである。来たるべきTPPの時代にどのように打ち勝つか、そのための対抗策に取り組んでいるのだという。

本書はいわゆる重厚なノンフィクションとは一味違うのだが、繰り広げられる手数の多さに、とにかく圧倒される。そして、著者自身が投げかける「最近の会社員、とくに大企業に務めている人は、公務員化しているようです。けれど、私は聞きたいのです。実際に動き出すのはいつですか？誰ですか？」という公務員らしからぬメッセージが、妙に頭の中にこびりついて離れない。

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見事に限界集落を脱却させた石川県羽咋市役所の一公務員の凄い話。

「可能性の無視は、最大の悪策である。」と語る高野さんのプロジェクトの動かし方とその実行力、手数の多さには圧倒されてしまう。本書の標題ともなっているローマ法王を活用したブランド化戦略に始まり、「烏帽子親制度」、「ＵＦＯで町おこし」、「腐らない米の開発」など突拍子もなさそうなアイディアを周りを動かし具現化していく手法・行動力・その姿勢は学ぶことが非常に多いです。

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限界集落を救った公務員のお話。彼のモットーは『可能性の無視は最大の悪策』である。きっと誰もが経験する事だと思うが、実行する前からムリだと決めつけてしまう人は結構多いのでは？非常に耳が痛い言葉である。ＵＦＯを使った町おこしや、マスコミを利用した宣伝など、ほとんどが飛び道具を使った奇襲作戦の様な内容ばかりだが、彼の根底にある情熱と正直な心が、困難を乗り切る一番の武器なのだと思った。素晴らしいと思った。思ってないで実行しなさいと言われそうだ。

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奮闘する公務員の話。

ビジネス書じゃないので、押しつけがましさがなく、著者のぶっ飛んだ発想に驚かされる。

脳の使っていない部分を刺激してくれる本。

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農業にマーケティングをもってきた人、そんな印象。村が変わるその様は、きっと震えるくらいの感動があったんじゃないかな。感動して涙がでるくらいの仕事がしたいよね。

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　限界集落を活性化し，その農作物をブランド化させ，Iターンの若者を呼び込むまでにした，行動する職員の話．
　『生産者/住民が中心』を基本に，生産者が価格を決め，生産者が販売する，また，住民が入村者を選び，住民が援農若者を泊めるかどうか決める，という生産者/住民が主体者になるよう仕向けている．また，主体者として一歩一歩踏み出すための仕掛けとして，タウンミーティングへの参加，マスコミを活用してポジティブな情報が遠くからじわじわと染み込ませることによる雰囲気作り，と直接的，間接的に心に響く方法を採っている．　がむしゃらなだけでなく，失敗事例を徹底的に学び逆をやる，ブランディング手法，流通，生産物の評価などに先進的で科学的な手法を多く取り入れている．
　『可能性の無視は最大の悪策』という信念のもと，出来ることを積み上げていく実行力，また，”出来ること”の幅広さに驚かされ，元気になる．

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面白かった！
自分に課せられた使命を全うするために必要だと判断すれば、ローマ法王だろうが、レーガン、サッチャー、ゴルバチョフだろうが手紙を書く。行動し、人を巻き込み、運までも引き寄せていく。
常識にとらわれる凡人の目には「奇策」と映るかもしれないことでも、いわば「秀吉タイプ」であるスーパー公務員・高野さんにとっては「やるべきだから、やる。可能性があるから、やってみる」だけのこと。

でもそんな「上空の高い位置から全体を見て核心を捉える」鳥の目と、「地べたを這いつくばり、粘って粘って細部を捉える」虫の目を併せ持つのは、高野さんがお役所人間とはまったく違うバックボーンを持つアウトサイダーだから、ってことが読み進むにつれてわかってくる。ははぁ～と驚き、そしてさもありなん、と思う。

幅広い雑学と人脈、そして現世を一歩離れた立場から見ることのできる宇宙観。これなくしては、「人体経済学」などの有機的な考え方は出てこないだろうな。

エピソードとして面白かったものは多いのだけど、ひとつ心に残ったものとして「農家カフェ」立ち上げ時のもの。Iターンの若者に任せることにした農家カフェ。ちょうど仕掛けた村のイベントと同時期のことでもあり、県外の集客も相当見込める。でもそこで「街道に看板は一切出すな」と言った高野さん。なぜ？の問いに対する彼の答えがとても好きです。

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公務員とは思えない発想をする人。と思ったら、放送作家をやっていたり、僧侶だったり。
逆転の発想で、プラス思考で考え１％でも可能性があれば、実行してみる。ローマ法王でもだれでもアタックする。PRの原点を見るような気がする。

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自宅ソファーで読了。
熱くなる行動力。久しぶりの爽快読了感。
可能性の無視は最大の悪策。響きました。

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前向きに頑張ろうと思える本だった。
可能性の無視は最大の悪策。
反対意見ばかり言う人がいる。なんとなくもっともらしく聞こえるが、結局のところ、何もしない、もしくは余所の真似だけ。

限界は、自分たち自身が決めてしまっているんだな・・。改めて反省。転んだら起き上がればいい。上を向けば、どこか開いているはず。光が差し込むはず。やってみせて納得してもらわないと。

にしても、ぶっとんだ行動力が爽快！人生楽しめるかは自分次第だな。

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「可能性の無視は最大の悪策である」
過疎地域を活性化するために様々な仕掛けを企画・実行した役人のおはなし。

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限界集落の再生、農作物のブランド化を1年で成し遂げた市役所職員のお話。

一見、高野氏は豪放磊落な人物に思えますが、凝り固まった役所・ＪＡ、後が無いため失敗を極度に恐れる農家の意識・現状を変える為に、尽力する姿に驚かされました。

メディアを巧みに駆使した宣伝、当時では聞き慣れなかったであろうTPPを見据えての行動など、感服しました！

「ＵＦＯで町興し」の章までくると多少、武勇伝を語っているようにも受け取れますが、この位語気を強めて自分の成功談を語られたほうが、勇気づけられるかもしれませんね^^

事後報告で、会議や企画書は一切無しというのは、組織的に実行するのは難しいですが…高野氏の上司は大変な苦労をなされたんでしょうね；

（中央図書館）

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最近の会社員、とくに大企業に務めている人は、公務員化しているようです。(冒頭の一文)

公務員離れした公務員の活躍の自伝。
「可能性の無視は最大の悪策。1%の可能性があるならやってみる。」、著者の言いたいことの集約だと感じます。

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市職員７００人に一人一人配りたい。これを読んでもまだ「いてもいなくてもいい役人」でいるなら、役所を辞めてしまえと言ってしまいたい。「棚田オーナー制度」「空き家・空き農地バンク」「直売所の運営」。どこでもやっていて、でも、あまり成功していないこれらの制度。やり方と考えた方次第で、農業だけでこれほどの活性化を実現させられる可能性がある、と思い知らされた。著者は何度も「失敗しましょう」と呼びかける。失敗しないで会社の経営なんてわかるか。自転車の乗り方は転んで覚えるものだ。だけど、現実になったら「自転車に乗るのとはわけが違う」と反対、反対の嵐になる。そこにあるのは「本当は現状を変えたくない」「楽をしていたい」という意識じゃないだろうか？上司には稟議書を通さず、自分の発想を信じて突き進む。成功した理由はもちろん「成功するまで続けたから」だろう。こんな姿勢を見習いたい。農業をやってみたくなったのは、ここだけの話。

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舞台は、石川県羽咋市の農村地域。65歳以上の住民が半数以上を占める限界集落で、年間所得平均額が87万円という厳しい地域である。

著者は市役所の職員で、それまでも十分に町おこしなどで実績を残していたにもかかわらず、クズ職員の掃き溜めといわれていた農林水産課に”左遷”されてしまう。

さらに市長から①過疎高齢化集落の活性化、②農作物を1年以内にブランド化するという難題を突きつけられる。

そこからはまさに苦労の連続。自分たちでプラシシングできるよう、ＪＡを通さないよう農家に訴えかけるも、無理、前例がないの嵐。一方、役所でも予算はたったの60万しか与えられず、スピーディに物事を進めるために、会議を一切せず、すべて事後報告で物事を進め、上司の反感を買いまくる。
しかし、理解者を味方につけたり、まずは自分が野菜を売って、やってみせて、みなに共有するということをこころがけ、周囲を動かしていく（あのローマ法王まで！）。

その様子は「本当に事実か」と思うほどよくできており、ページをめくる手が止まらなかった。

そして、「奇跡のリンゴ」の木村さんともつながっていたのは個人的にとてもうれしかった。

モチベーションをあげたい人、今困難にぶち当たっていう人には広くお薦めできる。

■以下引用
・人間がどうしてひとつの方向にがーっと動くかというと、目と耳から入った情報によって心が動くのだ。一つの集落を動かすには、常に話題の中心に村を置けばいいと思った。

・物を売りたいときに売らないのが売る方法（神子原米が高級デパートに置かれるよう、敢えて売らなかった）

・可能性の無視は、最大の悪策
→1%でも可能性があれば徹底的にやってみる。やらないうちから絶対できないと思い込むことこそ無駄。

・公務員には3つしかいない。いてもいなくてもいい公務員、いちゃ困る公務員、いなくちゃならない公務員。それを選んでいるのは結局、本人。どれになるかは自分自身への問いかけにある。